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神戸地方裁判所 昭和54年(そ)1号 決定 1980年1月09日

主文

請求人に対し金二四万八、〇〇〇円を交付する。

請求人のその余の請求を棄却する。

理由

一  本件請求の要旨は、請求人は、神戸地方裁判所昭和四一年(わ)第六九四号恐喝被告事件につき、昭和五四年五月一〇日、同裁判所で無罪の判決を受け、右判決は控訴期間満了により確定したところ、請求人は右事件について、昭和四一年四月三〇日に逮捕、同年五月二日に勾留されてから、保釈許可決定により同年一〇月一五日に釈放されるまで、一六九日間にわたり抑留拘禁されたので、刑事補償法一条一項に基づき、同法四条一項、二項による補償金を請求する、というにある。

二  よつて考究するに、本件関係記録によれば、右恐喝被告事件(以下A事件という)における抑留拘禁の事実は請求人の右主張のとおり認められるが、他方請求人は、昭和四一年七月一日に昭和四一年(わ)第九六八号恐喝被告事件(以下B事件という)により、同年一〇月一四日に同年(わ)第一四八七号暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件(以下C事件という)によりそれぞれ同裁判所に公訴を提起され、右各事件につき、A事件に対する前記無罪判決と同時に有罪判決を受けた事実、A事件についての勾留は、B、C事件が公訴提起されて以後は、B、C事件の各公判審理のためにも利用された事実、B、C事件は請求人が控訴して、現在大阪高等裁判所に係属中である事実が認められる。

ところで、本件請求の対象となつている抑留、拘禁期間のうちBまたはC事件の公判審理にも利用された昭和四一年七月一日から同年一〇月一五日までの一〇七日間の勾留期間に対する刑事補償については、将来B、C事件が仮にいずれも無罪に確定すれば右期間の全部が補償されなければならず、仮にC事件だけが有罪に確定した場合は同年一〇月一四、一五日両日が、仮にB事件だけが、あるいは両事件共に有罪に確定すれば右期間全部が刑事補償法三条二号により裁判官の健全な裁量により補償の全部又は一部をしないことができる場合にあたるので、右判断をしなければならないところであるが、未だB、C両事件とも未確定である現段階においては、裁判所としては右各措置のいずれを執るとも決定できないから、右期間に対する刑事補償決定をなすわけにはいかない。

三  よつて、当裁判所は、本件請求中右一〇七日間に対する請求は刑事補償法一六条後段によりこれを棄却することとし、昭和四一年四月三〇日から同年六月三〇日までの六二日間に対する請求については、同法四条二項に定める諸般の事情を考慮し、一日当り金四、〇〇〇円、合計金二四万八、〇〇〇円の刑事補償をすることが相当であると認め、同法一六条前段により、主文のとおり決定する。

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